飴玉の呪い
ご飯を食べるのをサボっていたら、空咳が止まらなくなった。栄養失調気味になると結構よくあることで、喉がカサカサしてケンケンと咳が出る。
そういう時は飴を舐めてると少しマシになるので、菓子箱の中を漁った。
げっ、溶けてる。
このクソ暑い中、台所も完全に温まってしまって、菓子箱に入れておいた3つの飴玉のうち2つが溶けていた。
ひとつは原型はあるものの袋に傷があったのか表面がベタベタしている。あちゃ〜と思いながら捨てた。もうひとつはもう完全にぶにぶに。こりゃダメだと思って捨てた。
その中で1つだけ全く溶けてない……いや表面はちょっとベタつくけど、飴が1つ残ってたわけ。
4年前に友達だったコから貰った飴だった。ひと袋まるまる貰った桃味のまるいやつ。
そのコはサークルと学科が同じだった。私のあだ名が桃のジュースの名前だったから、その飴を見つけた時に私に合いそうと思ってお土産として買ってきてくれた。
よくわかんないけどちょっとピリピリ辛い味がして、私はその飴がそんなに好きじゃなかったけれど、4年かけてちまちま食べていた。それも最後の1個か。
具合が悪い時に食べるのがあいつから貰った飴だなんて。
あークソクソ。
そう思いながらころころと飴玉を舐めている。
2年前に絶交したそのコは、きっと今は私の事を考えもしないのだろうな。私の家によく泊まりに来ていた。家に置いていた私物を全部返して、貰ったものも処分したつもりでいたけれど、とんだ置き土産を置いていきやがって。結局私がいくら忘れたいと思っていても、どうしても私の中に居座りやがるんだ。畜生が。
あのコが私にかけた呪いが全て解けるのはいつになるのだろう。
あのコが嫌いだ。どうか私よりも不幸になってくれ。
呪詛返しのつもりで、口の中で小さくなった飴玉をガリガリ噛んで飲み込んだ。
〆